2020年読んだ本とBEST5
お久しぶりです。蜜柑です。
夏以来の更新となってしまいました・・・
そして、2021年にもなってしまいました。
去年は、コロナ渦で、大変な1年でしたが、皆さんはどうだったでしょうか。
私は、ここ数年で1番読書ができたかなあと思っています。
私は、全国転勤の会社なので、
県外移動ができなければ、近くに会社の人しかいないので、
家族や友達など会いたい人になかなか会えないという1年は辛かったですが、
家にいること自体は大好きなので、そこに関するストレスはなかったかなと思います。
もちろん、こんな状況が続いてほしくないので、2021年は、コロナに悩まされない年になるといいなと思っています。
しかし、いま現在、毎日のように感染者数は増えており、緊急事態宣言も再出されたところもありますね。
もう少しは、ステイホームでいる日々が続くと思いますので、
今日は、私の2020年に読んだ本とおすすめ小説BEST5を紹介します。
これから、本を読もうと思っている方は、ぜひ参考にして頂ければ嬉しいです。
では、まず、2020年に読んだ本の一覧を月ごとに振り返ります。
◎1月
・辻村深月『ツナグ 想い人の心得』
・東野圭吾『虚ろな十字架』
◎2月
・朝井リョウ『どうしても生きてる』
・瀬尾まいこ『強運の持ち主』・・・再読
・今村夏子『星の子』
・村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』
◎3月
・築山節『脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める』
・メアリーシェリー『フランケンシュタイン』
・湊かなえ『山女日記』
◎4月
・柚木麻子『ナイルパーチの女子会』
・凪良ゆう『流浪の月』
・小川糸『ツバキ文具店』
◎5月
・辻村深月『凍りのくじら』・・・再読
・桐野夏生『ハピネス』
・畑野智美『罪のあとさき』
・凪良ゆう『神さまのビオトープ』
・瀬尾まいこ『そして、バトンを渡された』・・・再読
◎6月
・彩瀬まる『あのひとは蜘蛛を潰せない』
・天祢涼『希望が死んだ夜に』
・柚木麻子『BUTTER』
◎7月
・小川糸『ライオンのおやつ』
・朝井リョウ『発注いただきました!』
・鯨井あめ『晴れ、時々くらげを呼ぶ』
◎8月
・綿矢りさ『手のひらの京』
・今村昌弘『屍人荘の殺人』
・古内一絵『マカン・マラン-二十三時の夜食カフェ』
・畑野智美『神さまを待っている』
◎9月
・東野圭吾『夜明けの街で』
・古内一絵『女王さまの夜食カフェ-マカン・マランふたたび』
◎10月
・桐野夏生『ロンリネス』
・歌野昌午『ずっとあなたが好きでした』
・古内一絵『きまぐれな夜食カフェ‐マカン・マラン みたび』
・柚木麻子『伊藤くんA to E』
◎11月
・朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』
・カズオイシグロ『わたしを離さないで』
・天祢涼『あの子の殺人計画』
・角田光代『さがしもの』
◎12月
・島本理生『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』
・瀬尾まいこ『夜明けのすべて』
・島本理生『ファーストラヴ』
・綿矢りさ『夢を与える』
・森絵都『出会いなおし』
以上です!
2020年は、48冊読了でした。(本当は50冊目標だったのですが・・・。)
今年は、再読本も5冊あって、どれも高校時代以来に読んだのですが、
あの時とはまた違う印象や読後感を持てました。
やはり、自分でも数年のうちに考え方が変わってたりするものなんだなあと感慨深く思って、再読も面白いなと思いました。
こういう時、手元に本があるというのは良いことで、いつでも読みたくなったら本棚から取り出して読めるので、今年は、再読ももっとしてみようかなあなんて思っています。
そして、ここからBEST5をご紹介します!
ひと言ずつ添えます。
第5位 凪良ゆう『流浪の月』
2020年の本屋大賞!
偏見や、決めつけ。本人の心を勝手に解釈する世間。
まさに今の時代に読んでほしい本だなあと思いました。
そして、凪良ゆうさんの繊細な文章がとても好きでした。表紙も素敵。
まだ読んでいないという方は、ぜひ!
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第4位 朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』
去年、本を読んでいて一番笑った本かもしれません。
朝井リョウさんは、小説は、ぜんぶ読んでいる位、高校時代から好きな作家の1人です。
でも、まだエッセイは読んだことなくて。。
そもそも、私は、あんまりエッセイ自体読んだことがなくて。しかし、朝井リョウさんのエッセイは、本当に面白いと聞いたので、手に取ってみました。
実際は、本当に面白かった。
朝井リョウさんは、芸人か?と疑ってしまうくらい、言葉が全部面白かった。
今年、とにかく笑いたい!と思った方や、本をあんまり読まないといった方に特におすすめです。
あとは、私のようにエッセイをこれまであんまり読んだことがない方、騙されたと思って、ぜひこれは手に取ってみてください!
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第3位 朝井リョウ『発注いただきました!』
またもや、朝井リョウさん。
デビュー10周年を迎えた朝井リョウさんが企業とのタイアップで書いた短編小説や、エッセイなどをまとめた1冊です。
一つ一つが短いので、飽きずに読めるし、どれもいい味が出ていて、とても良いです。
いつものダークな感じ・青春小説・面白エッセイのすべてが詰まっています。
朝井さんの本をまだ読んだことがない方にも、おすすめできる1冊です。
そして、私の大好きなaikoの曲が出てくる短編小説が出てきます。。
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第2位 東野圭吾『虚ろな十字架』
東野圭吾さんにハズレは、ほぼないと思っています。
トリックがどうのっていうのじゃなくて、事件の真相・人の苦悩・喜び・人の弱い心すべてが詰まっているのが東野さんのミステリー小説です。
そして、途中から止まらなくなる。。というのが東野さんの特徴。
物語の最初はここにつながるのか・・・という伏線回収も見事。
死刑になることは、本当に罪を償う事なのか?という問題提起型小説です。
重いテーマですが、読みだしたら止まりません。ぜひ。
[rakuten:book:18583656:detail]
第1位 村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』
2020年1位は、この小説でした。
小学校から中学校の思春期が描かれています。
思春期とか、青春とかって、キラキラしたイメージを持つ方が多いかと思いますが、
この小説は、本当にリアルで、クラスにある張り詰めたヒエラルキーが描かれています。中学時代は、もう10年以上の事なのに、忘れていた嫌な記憶も、何が楽しかったとかすべて、追体験したかのように蘇りました。
学生時代は、教室の中が自分の人生のすべてだと思ってしまうけれど、大人になったらそんなことないとやっと気づくことができる。
でも、当時は、到底そんな風に思えない。私も、その当時にこれを読んでいたら、苦しみながらも、救われたのかななんて思いました。
ここまで、リアルに描かれている青春小説は初めてでした。
小学校から中学校にかけて、大きく4人の人物たちの成長過程を見れるのも私好みでした。
学生時代をたまに思い出しては、苦しんでいる方・また、今学生の方、ぜひ手に取ってみてください。
[rakuten:book:17496524:detail]
この作品は、またいつか書評で、あげようと思っています。。
以上が2020年のBEST5でした。
今年は、50冊目標に読もうと思います!そして、毎年こんな風に1年を振り返れたらなと思っています。
長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。
今年は、更新の頻度もあげたいと思っています。。
宜しくお願いします!
【書評】吉本ばなな著『ふなふな船橋』ー自分を支えてくれるものとは何か?を考える作品
蜜柑です。
まだまだ暑いですね。私は、1年で1番長かった10連休を終えて、また日常に戻りヘトヘトになりながら、日々を送っています。
そんな疲れた日々にふと読みたくなる優しい文章…この作者さんの文章を読むと落ち着く…というような作者さん…!
私にとってそれは、吉本ばななさんです。
ということで、今回紹介するのはこちら!
タイトルと帯でお察しかもしれないですが、数年前大人気だったふなっしーが登場する物語です。
吉本ばななさんといえば、
『キッチン』が有名ですよね。
私も吉本ばななさんを読むきっかけになったのは、母の本棚に『キッチン』があったからです。
高校の時になんとなく手に取り、文章の雰囲気、人物達の暖かさ、でも容赦なく突きつけてくる生と死。身近な人物の死をとても悲しむ主人公がその死を受け入れていく物語を、決して重くはない文章で緩やかに描ける世界観にはっとさせられて一気にファンになりました。
ちなみに、『キッチン』はもちろん名作ですが、『キッチン』に収録されている『ムーンライト・シャドウ』が私は本当に大好きで、もう何度読み返したかわからないくらい好きですので、ぜひまだ読んでいないという方は、手に取ってみてください٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
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話を元に戻して、『ふなふな船橋』は、私は2016年に単行本が出た際に大学の図書館で読了していましたが、すごく好きだったので、文庫化したタイミングで購入し、このタイミングで再読しました。
結果、今読んで良かったーと本当に思いました。当時読んでいた時よりも、主人公の感情に入り込めた気がします。
まずは、あらすじから。
父親は借金を作って失踪し、母親は恋人と再婚することに。15歳で独りぼっちの立石花は、船橋で暮らす決断をする。それから12年、書店の店長をやり、恋人との結婚を考えながら暮らす花に、再び悲しい予感が…。だが彼女は、暗闇の中にいても、光を見つけていくのだった。(朝日新聞出版)
ここからは、3つの特徴に分けて、この小説を紹介します。
①ふなっしーについて
あらすじを見てわかるように、
主人公の花は、家庭環境が複雑です。
父親の失踪、母の再婚により、花は、15歳で母とも別れ、叔母の奈美の家で暮らすことになります。
この経緯は、父親母親に捨てられたというわけではなく、花の決断によって、叔母の家へと行きます。
花は、この境遇について特に不幸だとは思っていませんが、心の中では、寂しいという気持ちがどこかには必ずありました。
そんな花の支えになっていたのは、梨の妖精のぬいぐるみでした。それは母親と別れる際に、買ってもらったものでした。
その時の描写が私は好きです。
その瞬間まで、私はふなっしーをなんとも思っていなかった。
「ママはふなっしーが大好きだから、これをママだと思っていっしょにいてくれる?」
母は言って、かなり大きめの梨の妖精寝袋ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。ふなっしーがなぜかオレンジの寝袋に入っているものだった。
その瞬間のその光景が私の人生を変えた。私は梨の妖精の存在を心から大切に思うようになった。子どもみたいにふなっしーに頬を寄せる母の姿は、私の胸を素直に打ったのだ。(p13)
これがふなっしーと花の出会いです。
この時から、花はふなっしーと毎日一緒に寝て、泣いたり笑ったりする日々の中でもふなっしーだけは裏切らず、花のそばにいてくれます。
そんな存在は、皆さんにはありますか?
女性に多いかもしれないですが、ずっと昔から持っているぬいぐるみはありませんか?
私は、2歳の時に祖父に買ってもらったレッサーパンダのぬいぐるみが花にとってのふなっしーと同じような感じです。
毎日欠かさず一緒に寝ています。そのぬいぐるみは、たぶん他人から見たらもうすっかり汚れたぬいぐるみなのかもしれないですが、私にとっては、本当に大切なぬいぐるみです。
日々を過ごしている中で、辛い時も悲しい時も起こってしまうことは多々ありますが、家に帰ると必ず変わらずいてくれる存在があるとなんだか救われた気持ちになります。
とても、可愛らしく自分を癒してくれる存在。それがぬいぐるみです。
花にとって、それがふなっしーのぬいぐるみです。
この作品は、大人になった花の生活の中で、ある悲しい出来事が起こるのですが、その時にも変わらずいてくれるこのふなっしーにとても癒されます。
私もぬいぐるみが支えになったことが人生の瞬間瞬間で何度もあったので、とても花に共感できました。
また、ふなっしーのぬいぐるみは、
同じようにふなっしーのぬいぐるみを大切に思っているある女の子と花を結びつける存在でもあります。
その女の子は、花の夢の中にたびたび登場しているのですが、その女の子は一体誰なのか?実際に存在する女の子なのか?
この女の子については、少しオカルト要素が絡んできます。
吉本ばななさん特有のオカルト要素です。決してホラーではありませんが、この女の子の過去がかなり重いものなので、突然出てくる重い出来事に、驚きます。
女の子の過去や、展開は予想できない展開ですが、とても悲しく、でも悲しいだけじゃなくて感動する展開がありますので、こちらも見どころだと思います。
この女の子の登場には、ふなっしーがいてこその登場なので、物語の展開にふなっしーは必ず必要となります。
②失恋について
この作品の始まり方としては、やはり花が失恋したところから大きな展開となります。
花は、結婚を考えていた俊介さんに突然振られます。
理由は、「他に好きな人ができたから」。
2人の関係性が何か悪くなったわけでもなく、本当に突然振られてしまった花は、かなりショックを受けます。
この悲しみを背負った花がこれからどう生きていくのか、どう立ち直っていくのか?がこの作品の大まかな流れです。
20代半ばで、結婚まで考えている彼氏に振られ、なお、彼氏には新しい好きな人がいる。
こんなことになったら、どんなに辛いだろうと私は本当に悲しくなりました。
その悲しさを表している文章がさらに悲しさを感じさせて、花に感情移入をしてしまいます。
別れを切り出された瞬間の花の文章を引用します。
考えるべきことはたくさんあるはずなのに、頭の中はあちこちに勝手に逃げ回っていく。そうか、いつものような土曜日の夕方はもう永遠にないんだ、ということばかりくりかえし思っていた。私の場所、私が自由に出入りしていい部屋、私のためのふわふわした白いクッション。
別れを告げる間もなく、引き継ぎさえもなしに、あっという間にもう自分のものではなくなってしまった。(p51)
まるで世界が終わってしまったみたいだった。
彼がいない生活を思い描くことはできなかった。あまりにも長い間、彼と共に生きる未来だけを、今現在彼といっしょにいる時間よりももっとしっかりと、描いて生きてきてしまったから。
音をたてて、目の前でその世界は崩れて消えていった。後に残ったのは、仮の生活だと思っていた今の生活だけだった。その中になんの希望を見いだせばいいのか、わからなかった。(p71)
いつも土曜日に過ごしていた俊介さんの部屋には、もう行けなくなってしまうこと、何気なく過ごしていた恋人との時間はもう2度と帰ってこないこと、そして自分のいた空間には、花ではない新しい彼女が引き継ぎなしにこれから過ごしていくこと。
もう想像するだけで辛いですね。
どれだけの悲しみが花に押し寄せているのか、花は、この失恋から立ち直るのか?また、俊介さんとの復縁はあるのか?
これが花の大きなテーマとなります。
最初は、花は深い悲しみを背負っていきますが、徐々に時間が経つにつれて、また友達やそのほかの人物たちによって、自分らしく生きるとは何か?今までは、恋人に好かれるための自分でいたのではないか?というようなことを考えていきます。
そして、少し時間が経ってから、俊介さんと再会するシーンがあります。その時の花の心情がそれまでと大きく変わっていて、好きでした。
私はなんと多くの時間を彼がそれを求めていたわけでもないのに、彼の支配下で生きてしまったんだろう。彼は私に新しい風や生命の息吹を求めて好きになってくれたのに、私は全く逆に振れてしまい、彼が好きでなさそうなことまでいつのまにかしなくなっていた。好かれたいから合わせていたのだ。(p177)
好きな彼に「もっと好かれたい」と思うのは当然の事だと思います。
しかし、彼に好きになってもらうために、自分を見失ってしまうこと、意外とあるのではないでしょうか。
自分の中の勝手な理想像により、彼が好きそうなことか好きでなさそうな事かを考え、本当の自分を見失ってしまったことをこの時花が気付くのです。
彼と別れず、結婚する未来ももちろんそれはそれで、幸せな未来かもしれませんが、
自分を見失っていくような恋愛だったことに気付けた花は、この別れを初めて前向きに捉えられるようになります。
この失恋によって、
花は、本当の自分とは何か?自分は、本当は何がしたくて、何が好きなのか?という
自分の生き方を見つめなおしていきます。
その花の成長を見届けるのもこの作品の大きな特徴だと思います。
③船橋の街について
私は、船橋に行ったことがありませんが、船橋という街の存在を知ったのはやはりふなっしーの影響です。
タイトルにもある通り、この物語の舞台は船橋です。
この作品には、船橋に本当にあるのかな?と思われる店や、街の雰囲気が伝わってきて、いつか船橋に行ってみたいなと思うような描写がたくさん出てきます。
私の船橋・・・・・・その言葉ですぐにたくさん思い浮かぶいろいろな場面はみんなきらきらしていた。
私の家、幸子の家、俊介さんの家、松本さんの家。
ららぽーとやIKEAの休日のにぎわい。太宰治がツケをふみたおした薬局や書店や玉川旅館の由緒正しい看板。
駅前のからくり時計やデパート群。公設市場、細く長い海老川が海に出るまでの道、市場、梨園・・・もう止まらなかった。
まるで地図みたいに、ぽつぽつと、そして数えきれないほどのあらゆる場面が浮かんできた。(p202)
どこにでもありそうなのに、文章で表すととても魅力的に感じられる街。
それが花の船橋です。
でも、船橋ではなくても、自分の住んでいる街にも置き換えられると思います。
自分が住んできた街は、色々な出来事を経験できる自分にとっての特別な街です。
例えば高校時代に毎日友達と自転車を漕いだ道、家族と行った映画館、恋人とよく行ったカフェ・・・など自分が過ごしてきた分、その街の思い出は、日々増えていくと思います。
他人から見たら普通の道でも、普通の場所でも、自分にとっては大切な場所になることはあるのではないでしょうか。
この作品は、船橋に行ってみたくなるだけではなくて、
自分の住んでいる街をいとおしく思えることに気が付ける作品ではないかなと私は思いました。
私も、昔住んでた街とか、数年前はよく行っていたのに、もうあまり行かなくなってしまった場所などに行くと、その思い出もフラッシュバックすることがあります。
自分の生きてきた分、街の色も景色も変わっていくということに気付ける作品で、私は花が感じる街の描写がとても好きです。
この作品は、何か大きな事件が起きるわけではありませんが、
日々の生活を見直してみようと考えられるのと、
簡単な文章のなのに綺麗な描写を楽しむことができる作品でした。
それは、吉本ばななさんの作品の魅力でもあると思います。
この作品を読んで、やっぱり私は吉本ばななさんの作品が大好きだなと改めて思いました。
この作品のおすすめの人は、
①最近疲れている人
②今の日常を見直したい人
③昔から持っているお守りのようなものがある人
です。
吉本ばななさんの作品は大好きなので、また再読したり、新しい物を読んだ際には、またレビューしようと思います。
この作品は、文庫版で、246頁と短いので、久しぶりになんとなく読書してみようかなという人にもおすすめします。
ぜひ読んでみてください!
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まだまだ暑い夏、乗り越えていきましょう!!
【書評】今村昌弘著『屍人荘の殺人』-初めて読む新感覚ミステリー
蜜柑です。お久しぶりです。
また前回から間が空いてしまいました…!
暑くなりましたね!私はお盆休みを頂いていましたので、読書に励んでおりました。
まだまだ暑い日々が続きますが、そんな暑い夏の日々におすすめしたい一冊をこちらで紹介します。
今村昌弘さん著『屍人荘の殺人』!
こちらの作品もとても有名ですよね。
本屋に行けば、必ず目にする作品です。
タイトルからも、表紙からも不気味な感じがしますよね。
私は、ホラーが苦手なので、あまりこういうホラーじみた表紙のものは読めないのですが、夏だから!と思い、挑戦してみました。
読んでみると、途中雰囲気が怖いシーンはありますが、
ホラーではなかった!ので、ホラー嫌いな人は安心して読めると思います。
こういう小説だとグロいのかなと先入観を持ちがちですが、こちらに関しても大丈夫だと思います。私もグロいのは苦手な方なのですが、一般的なミステリーには必要程度ですので、安心して読めると思います。
ミステリーと〇〇〇(ネタバレなので、後ほど詳しく述べます。)のコラボで、
初めて読む新感覚ミステリーだなあと思いました。
まずは、あらすじから…!
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…!!究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作! (Amazon)
このあらすじから、私が想像したのは、綾辻行人さんの『十角館の殺人』です。館シリーズで有名ですが、大学生が面白半分に訪れた館で、連続殺人事件に巻き込まれていく…ミステリー小説としてはありがちですよね。
『十角館の殺人』も、いろんな仕掛けがあったり、一文で全てが覆されるという驚きもあり、とても面白かったですので、こちらもお勧めしておきます。
ミステリー小説として、こちらの館シリーズは長年大人気ですので、ぜひ。
話を元に戻して。
『屍人荘の殺人』について、ネタバレを全くなしで話を進めるのが難しいので、先におすすめの人を紹介します。
☆おすすめの人
①ミステリー小説が好き
②ライトに読める作品が好き
③10代・20代の方
上記に当てはまる!という方は、話題作でもありますので、ぜひ読んでみてください。
この作品は、ミステリーの技法は、めちゃくちゃな設定でもないので、推理小説としても面白かったです。軽く読める割には、殺害動機も、伏線回収もうまくいっており、ミステリー小説が好きな方にはうまくハマると思います。
ただ、あまりこういった、ライトに読める小説を読まない方や、人間模様を深入りして読みたい!という方にはあまり向かないかもしれません。また、こういった感覚を楽しめる方は比較的中高生・大学生向けかな?と私は思いましたので、年齢層が高めの方については、物足りなさを感じるかもしれません。
推理小説の技法を意識するという面だけで見ると、
とても面白い設定で初めて読む新感覚だったので、それが気になる!という方はぜひ読んでみてください٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
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以下からは、ネタバレを含みます(犯人や殺害方法・動機については触れません)ので、
真っ新な気持ちで読みたい!という方は、一度読んでからまた戻ってきていただければと思います。
この作品の特徴として、これから3つに分けて述べていきます。
①ゾンビの登場!
やはり、この小説は、これに尽きると思います。
あらすじには、ゾンビに全く触れていないので、私はゾンビが出てきたときに驚きました。
ただ、冒頭から、出てくる斑目機関の思惑とかから、何か得体の知らない出来事が始まるのだろうなとは、想像していました。
斑目機関とは、ゾンビの登場に深く関わっている、テロを起こす集団です。
この斑目機関について、なぜこういった研究を始めたのか?など私はもう少し掘り下げて欲しかったのですが、あまりそこの掘り下げがなかったので、この部分が物足りなさがありました。
今回の登場人物13名のうち、ゾンビに襲われる人が多数発生します。
この予期しないゾンビの発生によって、
「この物語は、ゾンビの発生で1人ずついなくなるミステリー小説か?」と一瞬思いましたが、そうではなかったということが、この小説の面白さです。
ゾンビの発生と、殺人事件。両方を体験する主人公たちの夏の物語です。
私は、
・なぜゾンビの発生により緊急事態の中で、犯行をしようと思ったのか?
・そこまでして殺したい動機とは何なのか?
・どのようにして、殺害を起こしたのか?誰が殺したのか?
・ゾンビ達から主人公達は逃げられるのか?
以上のことが気になり、私はページを進めていきました。淡々とライトに読むことができるので、一度物語に入り込むと夢中に読めました。
この小説で1番驚いたのはある人物(敢えて名前は伏せます)早々の退場でした。というのも、ゾンビに襲われてしまうのですが…。
いつも読むミステリー小説では欠かせないであろう人物があっけなくいなくなってしまうのには、驚きました。
実は、どこかで生きているのでは…なんてずっと思っていましたが、そんな事はなかったのが悲しかったです。
②登場人物について
この作品には先ほども申し上げたとおり、今回の夏合宿に参加することになる人物は13名います。
13名も登場人物がいるので、普通の小説では、誰が誰か分からなくなってしまうことが私は多いのですが、今回は、小説の途中で、剣崎比留子が登場人物の名前の覚え方を主人公に説明してくれるシーンがあります。
そのおかげで、後の混乱を妨げることができたので、このシーンは私は好きでした。
ごく普通の主人公葉村譲と、一風変わった明智恭介・そして謎の少女剣崎比留子という3人で映画研究部の夏合宿に加わっていく…という冒頭から、最初は、ありがちな登場人物たちだなと思いながら、3人の会話が微笑ましくなってきて、ライトに楽しむことができました。
そのほかの映画研究部のメンバーとOB達について、ゾンビに殺されたり、実際の殺人事件に巻き込まれたりなど事件が起こっていくのですが、最初の方で殺されてしまう段階で、そこまで愛着が湧かないキャラも多く、キャラの掘り下げについては、いまいちかなと思いました。
後々、生き残っていく人物達については、少しずつ人物像が浮かび上がってくるのですが、やはり登場人物の心理にスポットを当てるとそのまで感情移入はできませんでした。
私は、小説を読む際に、好きな登場人物を1人は見つけてその人にスポットを当てて読むことも多いのですが、この小説については、事件に主なスポットが当てられているので、特に好きな登場人物は、いませんでした。
13人も登場人物が出てくるので、難しいのかなとも思いましたが、もう少しキャラの掘り下げはしてほしかったかなと思いました。
ただ、比留子については、男性には人気がありそうだなと思いました。(私は、女性だからか特に何も思いませんでしたが笑)
主人公の葉村くんと比留子のやりとりは、微笑ましくて可愛かったです。ただそこまで、恋愛関係に陥ったりするものではないので、恋愛小説としての要素はそこまでありません。
③殺害動機・殺害方法について
この作品で1番面白いのは、この殺害動機,殺害方法だと思います。
通常のミステリーでも1番気になるのはこの部分だと思いますが、
この小説での特徴は、
・ゾンビに関わる殺害方法
・自分もゾンビに襲われる可能性もある中で、殺そうとする強い殺害動機
という一風変わった視点で見ていくので、こちらはとても面白かったです。
主人公達の殺害方法の考察などは、とても面白く、色々と考えさせられました。
殺害動機についても、犯人の恨む気持ちなどもしっかり説明されるので、よっぽどだったのだ…と悲しくなりましたが、設定としては、若干無理があるかなと思いました。感情移入はできるのですが、唐突に動機が出てきてしまうところが一部あったので、パズルのピースがハマるかのような感じには、なりませんでした。
ただ、こんな緊急事態の中で、よく犯人は、殺害を決意するものだと思うし、ゾンビを利用した殺人など私は初めて見たので、とても面白かったです。
また、主人公達や生き残っているメンバー達の奮闘ぶりもとてもすごいなと感心しました。
その部分がこの作品では1番の魅力ではないかなと思いました。
読後感としては、サッパリ綺麗に終わる!というような感じではないので、意外と後味は悪かったです。
もちろん事件は解決するので、推理小説としては、完成されているのですが。
面白いエンタメ小説として読める事は読めるのですが、最後は綺麗なハッピーエンドを求めたい!という方については、この作品は、ハッピーエンドではないので微妙かなとも思います。
まあ、人が殺されていく話なので、後味が悪くないはずはないと思うので、私はこの終わり方で良いのかなと思いました。
また、続編もすでに発売されており
『魔眼の匣の殺人』という作品で、同じ人物が登場するようですので、この作品にハマった!という方については、こちらも読んでみてください。
私はこちらは未読ですので、また読んでみたいと思います。
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最後に、この『屍人荘の殺人』は、
ちょうど今の季節・夏に読みたい一冊だと思うので、今お勧めしたいと思います。
後なんでもいいからミステリーを読んでみたい!というような方についても、おすすめします。
【書評】小川糸著『ライオンのおやつ』‐穏やかな死への準備
こんにちは!蜜柑です。
今回紹介するのは、2020年本屋大賞第2位のこちらです。
小川糸さん著『ライオンのおやつ』
本屋大賞は、私が一番好きな賞です。。。
昨年は、瀬尾まいこさん著『そして、バトンは渡された』でした。この書評については、このブログの1回目にしているので、ぜひ読んでみてください。。
全国の書店員さんが「この本、沢山の人に読んでほしい!」という本を選んで投票した結果なので、難しい本や文学的すぎる本は、あまりランクインされません。
基本的に、読みやすくて感動する本が多いようなイメージがあります。
ちなみに今年の1位は、凪良ゆうさんの『流浪の月』でした。
この作品については、また後日書評するとして。。
今回は、第2位の『ライオンのおやつ』を紹介します。
まずは、あらすじから。
男手ひとつで育ててくれた父のもとを離れ、ひとりで暮らしていた雫は病と闘っていたが、ある日医師から余命を告げられる。最後の日々を過ごす場所として、瀬戸内の島にあるホスピスを選んだ雫は、穏やかな島の景色の中で本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者が生きている間にもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫は選べずにいた。(ポプラ社)
あらすじから見ても、
「ああ、病気の主人公の話ね」「最後泣かせに来る悲しい物語ね」と思う方も多いかもしれません。
実際、私も最初はそんなイメージで読むまでにどうしようかなと悩みました。
病気の主人公・もしくは病気の恋人みたいな設定って多いですよね。それの世間受けがいいのもあって、量産化されているようなイメージがあって、あんまり最初は読むのを抵抗していたのですが、私の母がかなりおススメしてきたのと、本屋大賞2位という肩書により、読むに至りました。
結果、、、読んでよかった!
というのも、読後感が最高でした。
確かに悲しい話ではあることは間違いないのですが、ただ悲しいわけではなくて、読み終わった後かなり穏やかな優しい気持ちになります。
私の母は、「ボロボロに泣いた」と言っていました。
私もボロボロというまではないにしろ、最後は自然に泣きました。
ここでは、特徴として、
①穏やかな死
②おやつとは何か
③優しい文体
の順番で紹介していきます。
①穏やかな死
皆さんは、「死」と聞いてどんなイメージを持ちますか?
「暗い」「怖い」「死んだらどうなるのだろう」・・・など色々あるかと思いますが
実際、「死」への恐怖は常にあると思います。
自分自身の「死」もそうですが、家族や身近にいる大切な人の「死」を考える事はとても悲しいし、辛いですよね。
「死」をテーマにした作品は、先ほども述べましたが、かなり多いです。
自分が病気になり、余命宣告を受けるものもあれば、家族や恋人の死により、悲しみに打ちひしがれる主人公。。。など考えれば「ああ、この作品も」と色々出てきますね。
私も、小説や映画でそういったものはいくつか見ましたが、その中で、この小説は
「一番穏やかな死」でした。
主人公の雫は、三十三歳で重病になり、余命を宣告されています。
余命を宣告されて治療にも向かい合いましたが、どうにもならなくて、最後に死ぬ場所を瀬戸内にある「ライオンの家」というホスピスで迎えることを決意します。
物語は、ライオンの家の代表・マドンナからの手紙から始まります。
実際に、治療のシーンなどもなく、助かるのか助からないのかがテーマではなく、
冒頭から「ああ、この物語はもう死へ向かう事しかないんだな」と感じます。
ですが、小川糸さんの優しい文章・瀬戸内の自然・入居者や犬の六花との出会いなどを通して、すぐに「この物語の中にずっと居たい」と思います。
このライオンの家を通して、雫はこれまでの人生を振り返っていきます。
雫はこれまでの人生で、自分の気持ちよりも人の気持ちを優先してきました。
そんな雫を説明する文章が私の中で、ドキッとさせられたので紹介します。
思い返すと、私はいつも、物事のすべてを「いい」か「悪い」かで決めてきた。それも、自分にとっての「いい」「悪い」ではなく、相手にとっての「いい」か「悪い」かで判断していた。先回りして相手の気持ちを推しはかり、相手が喜んでくれるなら自分を犠牲にすることも厭わなかった。相手が笑顔になってくれるなら、それが自分の幸せなんだと信じて生きてきた。
もちろん、それも間違いではないと思う。むしろ、ある意味ではとても正しい行いだ。
だけど、自分の感情を犠牲にしてきたのは、確かだ。癌になる根本的な原因はストレスです、と担当医に言われた時も、自分にはストレスなどない、だから担当医が言っていることは間違いなのだと信じて疑わなかった。(p35)
自分のしたいことよりも、人のしたいことを優先してしまう・・・
それが争いにつながらなくて、相手も喜んでくれるから自分は幸せ。
まず、この文章を読んだところで、「これ、自分もだ」と思った方は、読むことをおすすめします。
きっと、ライオンの家で過ごしたくてたまらなくなります。
ライオンの家は、海に囲まれたホスピスで、食事もとてもおいしく、自然も豊かです。
知り合いが誰もいないので、雫はのびのびと自由に過ごします。
そんな生活で、死へ向かう事がとても幸せだなと雫は思っていきます。
また、ずっと飼いたかった犬の六花との生活も夢のようで、とても楽しそうで、うらやましくなっていきます。
ホスピスの居住者達も皆それぞれ楽しそうで、ここで初めて雫は「自由」を手にします。
そんな穏やかな日々で生活をしながら自然と死へむかっていく・・・そんな雫を見ながら「死へ向かうことはそんなに恐ろしいことではないのかもしれない」「自分も死ぬのなら、こんな終わりを迎えたい」と読者は思うはずです。
②おやつとは何か
題名にもある「おやつ」とは何か?
これは、ライオンの家で毎週日曜日に開催されるおやつの時間のことを指します。
このおやつの時間は、入居者がリクエストした「死ぬ前に食べたいおやつ」を1つ選び、その思い出のエピソードを紹介し、入居者たちで共に最後に食べようというような時間です。
そのおやつのエピソードで、入居者の人生を味わえるというような素敵な時間です。
おやつは、くじ引きで決められます。
だから、選ばれる人も選ばれない人もいます。
全員が選ばれるわけではないことについて、雫は人生は「そんなものなのかもしれない」と納得するところが好きでした。
そのおやつを皆で食べる時・そのエピソードを聞く時・・・とてもやさしい気持ちになり、この物語の世界感が好きになります。
雫が選んだお菓子は何だったのか・どんなエピソードがあるのか・・・。
私は、雫のエピソードが読まれるシーンで泣きました。ぜひ読んでみてください。
③優しい文体
とにかく、小川糸さんの優しい文体がとても好きすぎる。
いくつも、「この文章いいなあ」と思える素敵な文章を見つけて、幸せな気持ちになったり、考えさせられたりしました。
ここでは、いくつか紹介します。
「思いっきり不幸を吸い込んで、吐く息を感謝に変えれば、あなたの人生はやがて光り輝くことでしょう」(p67)
素敵な文章ですよね。自分の生き方がどうなのか考えさせられる一文でした。
私の目標は、じゃあね、と手を振りながら明るく死ぬことだ。朗らかに元気よく、笑顔でこの世界から旅立つことだ。そのための準備を、今、ライオンの家でしている。マドンナをはじめ、たくさんの人に協力してもらいながら。(p123)
物語中盤で、ライオンの家で過ごしている雫が自分のこれからの生き方の目標を見つける所です。どんどん前向きになっていく雫が見れてとても好きな文章です。
今というこの瞬間に集中していれば、過去のことでくよくよ悩むことも、未来のことに心配を巡らせることもなくなる。私の人生には、「今」しか存在しなくなる。
そんな簡単なことにも、ここまで来て、ようやく気づいた。だから、今が幸せなら、それでいい。(p209)
物語終盤のこの文章。この文章に行きつくにあたった雫の心の動きに感動します。
他にもたくさん好きな文章がありました。
小説は、自分の思っている事・感じた事がうまく表現されていた時や、こんな考え方もあるのかとはっとさせられたり、自分にとって大切な言葉を見つけることが楽しいし、それが魅力でもあります。
私にとって、この小説に出会えてよかったと思えた理由は、
一番は文章の魅力にあるのかもしれません。
皆さんにとって、大切な言葉もこの小説で見つけられるかもしれません。
この小説をおすすめしたい人は、
①死に対してネガティブなイメージしかない人
②紹介した文章で少しでも好きな文章があった人
③人の顔色を常に浮かべてしまう人
です。
現在は、新型コロナウイルスの流行が続いており、落ち着かない日々ですが、
この小説を読むと、落ち着かない日々を忘れ、穏やかな気持ちになれました。
これを機に手に取ってみてください。。。
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【書評】天祢涼著『希望が死んだ夜に』‐深く考えさせられる社会派青春ミステリー
蜜柑です。
今回は、また初めての作家さんを読めて、とても考えさせられたので、紹介します。
天祢涼さん著『希望が死んだ夜に』。
昨年から本屋の文庫コーナーに行くと必ず目に留まる本でした。まず、このタイトルからなかなか衝撃でした。
小説って、基本的には最後にはハッピーエンドではないにしろ、何かしら救いがあるような終わり方をするものが多いし、読み手もそういうものをなんだかんだ求めていることが多いと思うので、このタイトルから「希望が死んだ」って、そんな絶望的なタイトルにしていいのか・・・と考えながらも、気になって、購入しました。
読了した結果、やはりとにかく暗くて、重いです。
ですが、ただ暗くてどん底の小説ではありませんでした。確かに読後感もなかなか重くて立ち上がれないくらでしたが、私はこの作品は、もっといろんな人たちに読んでほしいと強く思いました。
まずは、あらすじを紹介します。
神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたが、その動機は一切語らない。何故、のぞみは殺されたのか?二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がってー。現代社会が抱える闇を描いた、社会派青春ミステリー。(文春文庫)
社会派青春ミステリーって、色々積み込みすぎじゃない?どれも薄っぺらくなってしまうのでは。。。と内心あらすじを読んだだけでは私も思ってしまいました。
でも、読了した後は、本当にどれも中途半端でなく、しっかり描かれていました。一番心配していたのは、ミステリーの部分でしたが、見事に騙されてとっても面白かったです。
ということで、ネタバレなしで紹介できる社会派の部分をまずは紹介します。
◎社会派について
この作品のテーマでもある、社会派というのは、貧困問題です。
主人公である冬野ネガは、とにかく貧しい暮らしをさせられている中学生です。
幼少期、ネガの父親がネガや母親に暴力をふるうようになって、母親はネガを連れて逃げます。その後、父親と母親は正式に離婚しますが、養育費は一切もらわずに母一人、子一人で暮らすことになりました。
母は、弁当屋やスナックで働きますが、やがて精神的に不安定になり、働けなくなってしまいます。
そんなネガのある日の夕飯は、ご飯とみそ汁とハム三枚と、リンゴ半分。
ネガは自分のことを少しも不幸だと思っておらず、むしろ幸せ者だと感じています。
自分の生活を少しも異常だと思っていない描写は、なかなか苦しかったです。
ごちそうさまをして、今度こそ宿題をしようと思ったけれど、もうすっかり暗くなっていた。電気代を考えると、宿題は明日に回した方がいい。家中の電気を消して、シャワーを浴びる。電気をつけてお風呂に入る人もいるらしいけれど、意味がわからない。石鹸の場所なんて見なくてもわかるし、それを身体にちょっとこすりつけて、頭からお湯を被るだけじゃないか。明かりに頼る必要が、一体どこに?( p56)
14歳の少女が、電気代を考えて生活をしている。
宿題もできず、シャワーも真っ暗の中でしか入れない。
でも、ネガはそのことを少しもかわいそうだと思っていなくて、むしろ電気をつけて入る人をふしぎに思っています。
そんなネガの生活がリアルで、麻痺していて、読んでいる側としてはどうにかならないのかと考えてしまいます。
この貧困が、今回の事件である春日井のぞみの死を巻き起こしてしまいます。
春日井のぞみは、フルートが上手な吹奏楽部の美人でクラスの人気者のネガのクラスメイトです。
特に仲が良い二人でもない上に、のぞみとネガの生きている世界は正反対です。
ネガは、クラスメイトから汚いものを見るような目で見られており、対するのぞみは、誰もが認める人気者の美少女です。
あらすじから、ネガが殺した理由は、「嫉妬心」からか?と考えてしまいます。
しかし、この作品はそんな単純な物語ではありません。
・なぜ、ネガはのぞみを殺したのか?
・ネガとのぞみは、どういう繋がりがあったのか?
この二つが最初は気になって、どんどんページを捲ってしまいました。
そして、たどり着いた真実がとっても切なかったです。。
『希望が死んだ夜に』というこのタイトルは本当に素晴らしいと思います。
後、この作品は、刑事目線と、ネガ目線の二つが存在しており、
刑事目線のネガのイメージとネガ自身の心情のギャップもあり、そこもとても面白かったです。
この作品をおすすめしたい人は、
①学園ミステリ―が好きな人
②重めの作風が好きな人
③今の生活に不満を感じている人
です。
当てはまる方はぜひ読んでみてください。
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そして、ここからはネタバレありで私のレビューを書きます。
まだ読んでいない方は、一度読んでみてから、またここに戻ってきていただけたらと思います・・・。
続きを読む【書評】彩瀬まる著『あのひとは蜘蛛を潰せない』‐正しい愛とは何か?を問う作品
お久しぶりです。
なかなか、更新ができませんでしたが、
ずっと読みたかった彩瀬まるさん初読できました!
ということで、今回紹介するのは
彩瀬まるさん著『あのひとは蜘蛛を潰せない』です。
椎名林檎さんが帯文書いてて、私はそれで気になって購入しました。。
皆さんは蜘蛛を潰せますか?また、潰せない方はなぜ潰せないのでしょうか?
私は潰せない側です。
理由としては、単純に虫嫌いなので見たくもないし触れたくもない・・・ということもあります。実際、そういう方も多いのではないでしょうか。
しかし、この小説のテーマは、そういう虫嫌いの話ではありません。
蜘蛛を潰せない理由は、一瞬で命が失われてしまい、その家族はどうなるだろう。。というようなことを考えてしまう人物のお話だと私は思います。
早速あらすじを紹介します。
ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という”正しさ”が呪縛のように付き纏う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。 (新潮文庫)
あらすじを見ていただくと分かるように、この小説には少し心を病んでいる人物が数人出てきます。
その人たちを見届けるのもとても面白いです。
私は、鎮痛剤依存の女性客(通称:バファリン女)が最後まで気になってました。
しかし、この小説での人間関係として、大きく挙げられるのが
⒈梨枝と母親との関係
2.梨枝と恋人の三葉くんとの関係 です。
まずは、梨枝と母親との関係について。
梨枝は28歳ですが、母親と実家暮らしです。
母親は、梨枝が自分の意に添わないことをすると、すぐに「みっともない」と言います。
例えば、
・梨枝が朝ご飯を他で食べてきて、いらないといったときも平気で作り、残すと無言で三角コーナーに入れる
・花柄の服やレースの服などを着ると、ぶりっ子の馬鹿女になるといわれる
娘に愛情が偏りすぎて、自分の支配下に置きたいという思いがそうさせているのでしょう。もう28歳なのに、梨恵は常に母親がどう思うかを気にしながら生きなくてはならない。
この生きづらさを変えていこうと思えた瞬間を作ったのが
三葉くんです。
三葉くんとの関係は、またとても面白い。
大学生と28歳なので、年齢差がすごいし、三葉くんは梨枝と真逆の性格です。
梨恵が蜘蛛を潰せない側だとしたら、三葉くんはいともたやすく潰してしまう側。
2人の間で、蜘蛛をめぐる話があるので、ここで紹介します。
「三葉くんが来る前、お店に、蜘蛛に触れない男の人がいたよ」
「へえ、なんでだろう」
「潰しちゃうのがこわいみたいだった」
「生きづらそうな人だなあ」 *1
三葉くんは、蜘蛛を潰せない人のことを「生きづらそうな人」と一言で表す。
この小説は、三葉くんのいうように「生きづらそうな人」が溢れている作品です。
そんな、生きづらい側にいる梨枝と三葉くんとの恋愛関係はとても面白く、
梨枝が三葉くんとの出会いによって、どう変わるのか、
また、三葉くんにも秘密があって。。。
というようなお話です。
この本をお勧めしたい人は
➀過保護な環境で育ち、今でも両親の顔色を窺っている人
②自分は生きづらい性格をしているなと感じた事のある人
③蜘蛛を潰せない人
です。
ぜひ、読んでみてください!
私は、彩瀬まるさん他の作品もこれから読んでいきたいと思います。。
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*1:122頁
【書評】瀬尾まいこ著『そして、バトンは渡された』‐暖かくて優しい涙が溢れる
瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』
「2019年本屋大賞」を受賞したこの作品は、本屋さんに行った際に目にしたことはあるのではないでしょうか。
私は、この作品は1年以上前に読了したのですが、本日再読了しました。
1度目この作品を読んだ時、残りのページが少なくなるにつれて、
「終わらないでほしい。」「もっとこの作品の中に居たい」という気持ちと共に最後は涙が止まりませんでした。本を涙を流しながら読むことって、私は数えるくらいなのですが、この作品はお涙頂戴的なものではなく、本当に自然な暖かい涙が溢れました。
まずは、あらすじから、ネタバレなしで紹介していきます。
十七歳の森宮優子は、これまで名字が四度も変わっている。血の繋がらない親との間をリレーされるが、全く不幸ではない。この作品では、森宮さん(現在の父親)との生活や高校生活が主に描かれているが、それと同時並行で過去の優子の親とのエピソードを盛り込んである。優子の生い立ちと、森宮さんとの会話、これまでの親との生活を通して、暖かい気持ちになれる作品です。
☆おすすめの人
・優しい物語が好きな人
・家族を大切に思っている人
・現在、疲れている人
私は、瀬尾まいこさんが本当に好きで、瀬尾さんの作品は全て読了していますが、
この作品は、「ああ、やっぱり瀬尾さんは最高だ」と思わせてくれる読了感でした。
私がこの作品で一番の見どころだと思うのは、
森宮さんと優子の会話です。
とにかく二人の会話が面白すぎる。
森宮さんの少しずれた感性と優子の冷静な心の声が見事にはまっていて、何度も笑えました。
・始業式を娘の重要な行事に思いこみ、朝からカツ丼を作り、一時間仕事の休みをとる森宮さん。
・優子が友達と仲違いをしたと悩んでいる時に、餃子を大量に作る森宮さん。
二人が食卓を囲むときには、必ず色んな食事と共に、微笑ましい会話が入っていきます。この二人の会話が本当にクスっと笑えて、ずっとこの二人の会話を見たいと終盤にかけては切実に思います。
ラストも、ほっこりと感動するもので、読み終わった後、家族や大切な人に会いたくなります。
私は、優しい涙ってあるんだなあとこの作品を読んで初めて思いました。
後、この作品をすべて読んだら、一番最初のページに戻ってみてください。
私は、これでさらに号泣しました。
ぜひ、手に取ってみてください(^O^)/
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ついでに、瀬尾まいこさんで私が大好きな『幸福な食卓』もぜひ。
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