【書評】今村昌弘著『屍人荘の殺人』-初めて読む新感覚ミステリー
蜜柑です。お久しぶりです。
また前回から間が空いてしまいました…!
暑くなりましたね!私はお盆休みを頂いていましたので、読書に励んでおりました。
まだまだ暑い日々が続きますが、そんな暑い夏の日々におすすめしたい一冊をこちらで紹介します。
今村昌弘さん著『屍人荘の殺人』!
こちらの作品もとても有名ですよね。
本屋に行けば、必ず目にする作品です。
タイトルからも、表紙からも不気味な感じがしますよね。
私は、ホラーが苦手なので、あまりこういうホラーじみた表紙のものは読めないのですが、夏だから!と思い、挑戦してみました。
読んでみると、途中雰囲気が怖いシーンはありますが、
ホラーではなかった!ので、ホラー嫌いな人は安心して読めると思います。
こういう小説だとグロいのかなと先入観を持ちがちですが、こちらに関しても大丈夫だと思います。私もグロいのは苦手な方なのですが、一般的なミステリーには必要程度ですので、安心して読めると思います。
ミステリーと〇〇〇(ネタバレなので、後ほど詳しく述べます。)のコラボで、
初めて読む新感覚ミステリーだなあと思いました。
まずは、あらすじから…!
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け―。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった…!!究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作! (Amazon)
このあらすじから、私が想像したのは、綾辻行人さんの『十角館の殺人』です。館シリーズで有名ですが、大学生が面白半分に訪れた館で、連続殺人事件に巻き込まれていく…ミステリー小説としてはありがちですよね。
『十角館の殺人』も、いろんな仕掛けがあったり、一文で全てが覆されるという驚きもあり、とても面白かったですので、こちらもお勧めしておきます。
ミステリー小説として、こちらの館シリーズは長年大人気ですので、ぜひ。
話を元に戻して。
『屍人荘の殺人』について、ネタバレを全くなしで話を進めるのが難しいので、先におすすめの人を紹介します。
☆おすすめの人
①ミステリー小説が好き
②ライトに読める作品が好き
③10代・20代の方
上記に当てはまる!という方は、話題作でもありますので、ぜひ読んでみてください。
この作品は、ミステリーの技法は、めちゃくちゃな設定でもないので、推理小説としても面白かったです。軽く読める割には、殺害動機も、伏線回収もうまくいっており、ミステリー小説が好きな方にはうまくハマると思います。
ただ、あまりこういった、ライトに読める小説を読まない方や、人間模様を深入りして読みたい!という方にはあまり向かないかもしれません。また、こういった感覚を楽しめる方は比較的中高生・大学生向けかな?と私は思いましたので、年齢層が高めの方については、物足りなさを感じるかもしれません。
推理小説の技法を意識するという面だけで見ると、
とても面白い設定で初めて読む新感覚だったので、それが気になる!という方はぜひ読んでみてください٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
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以下からは、ネタバレを含みます(犯人や殺害方法・動機については触れません)ので、
真っ新な気持ちで読みたい!という方は、一度読んでからまた戻ってきていただければと思います。
この作品の特徴として、これから3つに分けて述べていきます。
①ゾンビの登場!
やはり、この小説は、これに尽きると思います。
あらすじには、ゾンビに全く触れていないので、私はゾンビが出てきたときに驚きました。
ただ、冒頭から、出てくる斑目機関の思惑とかから、何か得体の知らない出来事が始まるのだろうなとは、想像していました。
斑目機関とは、ゾンビの登場に深く関わっている、テロを起こす集団です。
この斑目機関について、なぜこういった研究を始めたのか?など私はもう少し掘り下げて欲しかったのですが、あまりそこの掘り下げがなかったので、この部分が物足りなさがありました。
今回の登場人物13名のうち、ゾンビに襲われる人が多数発生します。
この予期しないゾンビの発生によって、
「この物語は、ゾンビの発生で1人ずついなくなるミステリー小説か?」と一瞬思いましたが、そうではなかったということが、この小説の面白さです。
ゾンビの発生と、殺人事件。両方を体験する主人公たちの夏の物語です。
私は、
・なぜゾンビの発生により緊急事態の中で、犯行をしようと思ったのか?
・そこまでして殺したい動機とは何なのか?
・どのようにして、殺害を起こしたのか?誰が殺したのか?
・ゾンビ達から主人公達は逃げられるのか?
以上のことが気になり、私はページを進めていきました。淡々とライトに読むことができるので、一度物語に入り込むと夢中に読めました。
この小説で1番驚いたのはある人物(敢えて名前は伏せます)早々の退場でした。というのも、ゾンビに襲われてしまうのですが…。
いつも読むミステリー小説では欠かせないであろう人物があっけなくいなくなってしまうのには、驚きました。
実は、どこかで生きているのでは…なんてずっと思っていましたが、そんな事はなかったのが悲しかったです。
②登場人物について
この作品には先ほども申し上げたとおり、今回の夏合宿に参加することになる人物は13名います。
13名も登場人物がいるので、普通の小説では、誰が誰か分からなくなってしまうことが私は多いのですが、今回は、小説の途中で、剣崎比留子が登場人物の名前の覚え方を主人公に説明してくれるシーンがあります。
そのおかげで、後の混乱を妨げることができたので、このシーンは私は好きでした。
ごく普通の主人公葉村譲と、一風変わった明智恭介・そして謎の少女剣崎比留子という3人で映画研究部の夏合宿に加わっていく…という冒頭から、最初は、ありがちな登場人物たちだなと思いながら、3人の会話が微笑ましくなってきて、ライトに楽しむことができました。
そのほかの映画研究部のメンバーとOB達について、ゾンビに殺されたり、実際の殺人事件に巻き込まれたりなど事件が起こっていくのですが、最初の方で殺されてしまう段階で、そこまで愛着が湧かないキャラも多く、キャラの掘り下げについては、いまいちかなと思いました。
後々、生き残っていく人物達については、少しずつ人物像が浮かび上がってくるのですが、やはり登場人物の心理にスポットを当てるとそのまで感情移入はできませんでした。
私は、小説を読む際に、好きな登場人物を1人は見つけてその人にスポットを当てて読むことも多いのですが、この小説については、事件に主なスポットが当てられているので、特に好きな登場人物は、いませんでした。
13人も登場人物が出てくるので、難しいのかなとも思いましたが、もう少しキャラの掘り下げはしてほしかったかなと思いました。
ただ、比留子については、男性には人気がありそうだなと思いました。(私は、女性だからか特に何も思いませんでしたが笑)
主人公の葉村くんと比留子のやりとりは、微笑ましくて可愛かったです。ただそこまで、恋愛関係に陥ったりするものではないので、恋愛小説としての要素はそこまでありません。
③殺害動機・殺害方法について
この作品で1番面白いのは、この殺害動機,殺害方法だと思います。
通常のミステリーでも1番気になるのはこの部分だと思いますが、
この小説での特徴は、
・ゾンビに関わる殺害方法
・自分もゾンビに襲われる可能性もある中で、殺そうとする強い殺害動機
という一風変わった視点で見ていくので、こちらはとても面白かったです。
主人公達の殺害方法の考察などは、とても面白く、色々と考えさせられました。
殺害動機についても、犯人の恨む気持ちなどもしっかり説明されるので、よっぽどだったのだ…と悲しくなりましたが、設定としては、若干無理があるかなと思いました。感情移入はできるのですが、唐突に動機が出てきてしまうところが一部あったので、パズルのピースがハマるかのような感じには、なりませんでした。
ただ、こんな緊急事態の中で、よく犯人は、殺害を決意するものだと思うし、ゾンビを利用した殺人など私は初めて見たので、とても面白かったです。
また、主人公達や生き残っているメンバー達の奮闘ぶりもとてもすごいなと感心しました。
その部分がこの作品では1番の魅力ではないかなと思いました。
読後感としては、サッパリ綺麗に終わる!というような感じではないので、意外と後味は悪かったです。
もちろん事件は解決するので、推理小説としては、完成されているのですが。
面白いエンタメ小説として読める事は読めるのですが、最後は綺麗なハッピーエンドを求めたい!という方については、この作品は、ハッピーエンドではないので微妙かなとも思います。
まあ、人が殺されていく話なので、後味が悪くないはずはないと思うので、私はこの終わり方で良いのかなと思いました。
また、続編もすでに発売されており
『魔眼の匣の殺人』という作品で、同じ人物が登場するようですので、この作品にハマった!という方については、こちらも読んでみてください。
私はこちらは未読ですので、また読んでみたいと思います。
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最後に、この『屍人荘の殺人』は、
ちょうど今の季節・夏に読みたい一冊だと思うので、今お勧めしたいと思います。
後なんでもいいからミステリーを読んでみたい!というような方についても、おすすめします。