【書評】彩瀬まる著『あのひとは蜘蛛を潰せない』‐正しい愛とは何か?を問う作品
お久しぶりです。
なかなか、更新ができませんでしたが、
ずっと読みたかった彩瀬まるさん初読できました!
ということで、今回紹介するのは
彩瀬まるさん著『あのひとは蜘蛛を潰せない』です。
椎名林檎さんが帯文書いてて、私はそれで気になって購入しました。。
皆さんは蜘蛛を潰せますか?また、潰せない方はなぜ潰せないのでしょうか?
私は潰せない側です。
理由としては、単純に虫嫌いなので見たくもないし触れたくもない・・・ということもあります。実際、そういう方も多いのではないでしょうか。
しかし、この小説のテーマは、そういう虫嫌いの話ではありません。
蜘蛛を潰せない理由は、一瞬で命が失われてしまい、その家族はどうなるだろう。。というようなことを考えてしまう人物のお話だと私は思います。
早速あらすじを紹介します。
ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という”正しさ”が呪縛のように付き纏う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。 (新潮文庫)
あらすじを見ていただくと分かるように、この小説には少し心を病んでいる人物が数人出てきます。
その人たちを見届けるのもとても面白いです。
私は、鎮痛剤依存の女性客(通称:バファリン女)が最後まで気になってました。
しかし、この小説での人間関係として、大きく挙げられるのが
⒈梨枝と母親との関係
2.梨枝と恋人の三葉くんとの関係 です。
まずは、梨枝と母親との関係について。
梨枝は28歳ですが、母親と実家暮らしです。
母親は、梨枝が自分の意に添わないことをすると、すぐに「みっともない」と言います。
例えば、
・梨枝が朝ご飯を他で食べてきて、いらないといったときも平気で作り、残すと無言で三角コーナーに入れる
・花柄の服やレースの服などを着ると、ぶりっ子の馬鹿女になるといわれる
娘に愛情が偏りすぎて、自分の支配下に置きたいという思いがそうさせているのでしょう。もう28歳なのに、梨恵は常に母親がどう思うかを気にしながら生きなくてはならない。
この生きづらさを変えていこうと思えた瞬間を作ったのが
三葉くんです。
三葉くんとの関係は、またとても面白い。
大学生と28歳なので、年齢差がすごいし、三葉くんは梨枝と真逆の性格です。
梨恵が蜘蛛を潰せない側だとしたら、三葉くんはいともたやすく潰してしまう側。
2人の間で、蜘蛛をめぐる話があるので、ここで紹介します。
「三葉くんが来る前、お店に、蜘蛛に触れない男の人がいたよ」
「へえ、なんでだろう」
「潰しちゃうのがこわいみたいだった」
「生きづらそうな人だなあ」 *1
三葉くんは、蜘蛛を潰せない人のことを「生きづらそうな人」と一言で表す。
この小説は、三葉くんのいうように「生きづらそうな人」が溢れている作品です。
そんな、生きづらい側にいる梨枝と三葉くんとの恋愛関係はとても面白く、
梨枝が三葉くんとの出会いによって、どう変わるのか、
また、三葉くんにも秘密があって。。。
というようなお話です。
この本をお勧めしたい人は
➀過保護な環境で育ち、今でも両親の顔色を窺っている人
②自分は生きづらい性格をしているなと感じた事のある人
③蜘蛛を潰せない人
です。
ぜひ、読んでみてください!
私は、彩瀬まるさん他の作品もこれから読んでいきたいと思います。。
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*1:122頁